お役立ちコラム

【電力コラム】太陽光発電の伸びが足踏み。メガソーラーが抱える問題とは

 日本は、「2030年度までに2013年度比で温室効果ガスの排出を46%削減し、2050年度までに温室効果ガスの排出を実質的にゼロ、すなわち『カーボン・ニュートラル』にする」という目標を立てています。
 ここで、少しおさらいをしてみましょう。「温室効果ガス」とは、二酸化炭素やメタンなど、大気中に留まると地上から発生する熱を逃がさなくなり、地球の気温を暑くする有害物質のことです。
 この地球の熱を閉じ込める「温室効果」によって、今、「地球の温暖化」が進んでいます。地球温暖化は、ご存じのように、地球自体の気温が高くなる現象。地球温暖化によって、記録的な夏の暑さや、大型台風や豪雨などの自然災害が多く発生するといった被害が世界中で発生しています。また、北極や南極の氷が溶け、海の水位が上がって、このままでは数十年後に水没してしまう島や地域があるなど、世界的な問題になっています。
 地球温暖化の原因となる二酸化炭素は、物質を燃やすことなどで発生します。特に、エネルギー源である石油、石炭などを燃やすと、大量に発生します。
 このコラムでは、電力に関する問題を取り上げています。なぜ地球温暖化が電力のコラムで問題になるのかというと、発電によって発生する温室効果ガスが、実に全体の4割を占めるからです。
 発電に使われるエネルギー源は、その多くがまだ石炭や天然ガスといった「化石燃料」です。
 そのために、発電に使うエネルギー減を、温室効果ガスを発生しない「再生可能エネルギー(再エネ)」に転換しようという努力が、各国でなされています。再生可能エネルギーには、水力の他、太陽光、風力、バイオマス、水素などがあります。(原子力も温室効果ガスを発生しませんが、福島第一原子力発電所の事故以降、日本では賛否両論があり、原発の再稼働は進んでいません。)
 日本では、今後、再エネを主力電源(電源とは、発電のエネルギー源のこと)にすることして成長させていくことが目標として定められています。そのために太陽光発電や風力発電の導入をさかんに進めています。

 さて、導入が進む再エネですが、その中心はなんといっても太陽光発電です。
 2023年度の電源構成を見ると、発電量に占める再エネの比率は22.9%。
太陽光発電の比率は、うち10.7%を占めます。
 ただし太陽光発電の敷設は、近年伸びが鈍っています。どうしてそうなったのでしょうか。
 太陽光発電設備の敷設が伸び悩んでいる理由はいくつかあります。
 その一つが、「メガソーラー」と呼ばれる大規模発電設備の設置規制が全国の自治体で進んでいることです。
 メガソーラー設備は、地域の森林などを整地して建設されるような例が多くあります。中には、無計画な森林開発によって、土砂崩れや泥水の大量流出が発生することがあります。それまで生えていた樹木を伐採してしまうことにより、地盤が弱くなるのです。2021年には熊本県でメガソーラー建設現場から土砂が流出。他にも危険性が指摘される事例がいくつかありました。他にも、景観の悪化や住民と事業者との間でのトラブルなども問題視されています。2022年段階で報道された太陽光発電所での住民トラブルは、160件以上にも及びます。
 そこで各地の自治体では、メガソーラーの建設に対して条例を定める動きが活発化してきました。禁止区域を定めたり、設置には議会や市長の許可を必要としたり、一定規模以上の施設には課税するなどの動きが相次いでいます。条例は、2014年に温泉観光地を有する大分県由布市が定めたのを皮切りに、2024年末段階で300にも及んでいます。  
 こうした規制が、メガソーラーの設置のストッパーとなっているのは否めません。
 もうひとつ、メガソーラーが設置できる場所は、ある程度開発しつくされてしまっているという現状もあります。これ以上の増加には結びつけにくい、とも見られています。

 また、設置規制ほどの問題ではないですが、最近増えてきた「出力制御」によるメガソーラーの採算性も、足踏みの原因のひとつではあります。
 出力制御は、電力需要が減った時期に、発電量が需要量を上回る、つまり余ってしまい、発電をストップすることです。春や秋など、気候が良くなってエアコンなどの電力需要が減った時期に発生します。
 また送電線には、流すことのできる電力量に限りがあります。そうした「送電容量の制約」による出力制御もあります。
 出力制御については、メガソーラー側で期待していた発電料金が得られなくなる、などの問題が発生します。そのため、太陽光発電の採算が必ずしも良好とはいえない状況にもなります。
 上のようないくつかの理由で、太陽光発電の設置の進捗は、鈍化の傾向となっています。
 政府の「第6次エネルギー基本計画」では、2030年度には発電量の36~38%程度が再エネとなり、うち、太陽光は14~16%にするという目標です。再エネの進展の牽引車となってきた太陽光発電が、今後も順調に増え続けていけるかは、より一層の努力と工夫が必要となると思われます。